平成21年6月、改正薬事法の施行に伴い、第三類以外の医薬品の郵送販売が全て行えない事態が発生しました。混乱を避けるため、同時に経過措置が設けられたものの、漢方薬の郵送によって健康維持をしておられる高齢者や病気の方にとって、非常に切実な問題となりました。
この事態を解決するため、漢方薬局を中心に力を結集して日本漢方連盟を立ち上げ、署名活動、行政・政治・業界団体との折衝等々、様々な活動をしてまいりました。
その甲斐あって、厚労省から漢方薬局を代表する団体として認められ、「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」の検討委員に選出されることとなりました。
業界団体の意見がぶつかり合う、非常に非常に難しい検討会となりましたが、漢方薬局を代表して、患者の方々の切実な声を届け、漢方薬局の主張を展開することによって、患者の方と漢方薬局の双方によい形で、漢方薬など医薬品の郵送販売を勝ち取ることができました。
今後、こうした問題が起こらないことを願い、下記に、当時の医薬品郵送規制の問題点と経緯を示します。
平成17年12月 | 医薬品販売制度改正検討部会・報告(平成16年5月から全23回開催) |
平成20年9月 | 政令案・省令案のパブリックコメント募集(~10月) ※パブコメ総数2,353件のうち、反対2,303件(97%) 賛成50件(約3 %) しかし、これらの意見は全く反映されることなく、省令は、そのまま公布されることとなる(平成21年2月6日)。 |
平成21年5月 | 第6回医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会(5月11日) 離島居住者、継続服用者への経過措置案を含む改正省令案が示されたが、問題点も多い。 【経過措置案】 離島居住者:2年間に限り郵送可。 平成21年5月31日以前からの継続服用者:継続している同一医薬品についてのみ2年間に限り郵送可。 <へき地等の居住者に関する問題点> 薬局・薬店のない離島居住者には2年間の郵送継続が認められたが、それ以外のへき地は認められていない。(山間へき地・雪国、及び薬局・薬店のある離島など) <継続服用者に関する問題点> H21年6月1日以降の新規の患者は、送れない 継続服用者も、処方が変更されると送れない 2年後は一般用医薬品第3類以外の全ての医薬品が郵送できなくなる(漢方薬は全て規制対象) 改正省令案に対するパブリックコメント募集(5月12日~18日) ケンコーコムと有限会社ウェルネットが国を提訴(5月25日) 一般用医薬品ネット販売の権利確認請求および違憲・違法省令無効確認・取消を求め、国を相手取って東京地方裁判所(東京地裁)に。 ケンコーコムと有限会社ウェルネットが国を提訴(5月25日) 改正省令案に対するパブリックコメントの結果発表(5月29日) ◎コメント総数9,824。経過措置に賛成は0.5%、 反対は10%強(内訳は「対象・品目・期間など経過措置を拡大すべき」 「経過措置は不要・経過措置を縮小すべき」に二分された) 「郵便等販売の規制をするべきでない」約85% ※「経過措置を拡大」及び「郵便等販売の規制をするべきでない」を合わせると約9割が規制緩和の方向であった。 |
平成21年6月 | 改正薬事法施行(6月1日) 医薬品郵送が不可となる。(3類以外) 【経過措置案】は、問題点を残したまま施行される。 |
平成22年1月 | 内閣府直属の行政刷新会議にて、規制制度改革を行う分科会の設置発表。 分科会の医療介護分野のテーマの一つに、「一般用医薬品の郵便等販売規制の緩和」が取り上げられる。 |
平成22年1~2月 | 行政刷新会議 ハトミミ意見募集。 (国の規制・制度等おかしなルールの見直しにつながる意見募集) 寄せられた要望、約4,800件のうち約1,800件が「一般用医薬品の郵送等販売規制」の撤廃要望。更に、撤廃要望のうちの半数は漢方薬に関するものであった。 |
平成22年3月 | ネット通販に関する1審判決(東京地裁)ネット側敗訴 「服用者の安全性確保にはインターネット販売では不十分」 |
平成22年4月 | ネット通販裁判で、ケンコーコム側が控訴(4月13日) |
平成22年10月 | 行政刷新会議「国民の声」意見募集。 (国の規制・制度等おかしなルールの見直しにつながる意見募集) 医薬品通販規制に関する意見総数8,180件。そのうち 漢方に関する意見が約98%(8000件超)。 |
平成22年12月 | 厚労省が郵送販売の届出をした薬局薬店を対象に「経過措置利用状況調査」を実施。結果は下記の通り。 郵送販売ツール:電話71% インターネット7.4% 郵送販売している医薬品:「2類」「薬局製剤」ともに漢方製剤がトップ。 郵送販売の送付先件数:「2類」 94217件 「薬局製剤」 37911件 発送先:同一県内へ「2類」24%「薬局製剤」61% 県外へ「2類」75%「薬局製剤」38% 1店舗あたりの送付先件数:郵送販売を行っている薬局・薬店では、2ヶ月間に7~8件へ送付している所が多い。 |
平成23年3月 | 「規制仕分け」で「一般用医薬品の郵便等販売規制の緩和」が議題になり、規制緩和の方針が示される。 |
平成23年4月 | 厚労省より「2年間の経過措置再延長」の方針が示され、パブリックコメント募集。 【経過措置延長に関する意見】 経過措置延長に賛成および更なる規制緩和を求める意見:2008件(99.6%) 経過措置延長に反対(継続使用者のみ反対、薬局製剤のみ反対を含む):8件(0.4%) 【郵便等販売規制や販売制度に関する意見】 経過措置対象ではない場合でも郵便等販売を認めてほしい:4404件(99.7%) 対面販売の原則を守るべき:12件(0.3%) |
平成23年5月 | 医薬品郵送販売規制に関し、経過措置期間を平成25年5月31日まで、さらに2年間延長する省令が施行。(5月27日) |
平成23年7月 | 「一般用医薬品のインターネット等販売規制の見直し」について、規制・制度改革に係わる追加方針として閣議決定。 規制緩和の方向が示される。 |
平成23年10~12月 | 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS) が中心となり、「医薬品の安全で円滑な提供方法を考える有識者会議」を民間で立ち上げ、H24年3月2日まで全5回行われる。 日本漢方連盟として、制度改正前までの漢方薬局の郵送販売方法とその重要性について説明。(12月2日) |
平成24年1月 | 内閣府行政刷新会議の「規制・制度改革に関する分科会」において、「一般用医薬品のインターネット等販売規制の見直し」の方針を重点フォローアップ項目に選定。 |
平成24年4月 | 民間の「医薬品の安全で円滑な提供方法を考える有識者会議」が報告書をまとめ、厚生労働省に提出。(4月6日) 第2類医薬品について、初回対面・記録を残した上での電話相談販売を基本に、条件付きでネット販売も容認する内容。 ネット通販裁判 控訴審で、ケンコーコム側 勝訴。(東京高裁) 1審判決を取り消し、「ケンコーコム側の1類・2類医薬品を郵送販売する権利を認める」判決が出された。(4月26日) |
平成24年5月 | 厚労省が最高裁に上告。(5月9日) (社)日本漢方連盟と漢方和漢薬調査研究審議会の共催で「漢方・和漢薬郵送購入1000人アンケート」を実施し、その結果を厚労省に提出。(5月31日) |
平成25年1月 | ネット通販裁判 最高裁判決で国が敗訴。郵便等販売を規制する省令が実質無効となる。(1月11日) |
平成25年2~5月 | 「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」が開催され、(社)日本漢方連盟が検討会委員に選ばれる。 第1回検討会は2月14日に開催され、5月31日まで全11回を数えた。 |
平成25年8~9月 | 「一般用医薬品の販売ルール策定作業グループ検討会」が開催され、(社)日本漢方連盟が検討委委員に選ばれる。第1回検討会は8月15日に開催され、9月20日まで全4回行われた。日本漢方連盟として、薬局製造販売医薬品(煎じ薬)をはじめとする漢方薬について、患者さんと漢方薬局の双方にとって、運用しやすい形で郵送販売が可能となるよう主張を重ねた甲斐あり、より良い形で郵送販売が認められることとなった。 |
平成26年6月 | 改正薬事法が施行され,医薬品の新たな販売制度がスタートした。 これにより漢方薬を含めた医薬品の郵送販売が可能となった。(6月12日施行) |
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