医薬品販売を取り巻く状況が目まぐるしく変化している昨今、日本の伝統的医薬品である漢方薬を取り巻く情勢も大きく変化しています。平成21年におきた改正薬事法施行に伴う医薬品郵送販売規制では、漢方薬の全面郵送禁止という突然の事態に直面し、漢方薬業界は大きな打撃を受けました。そして、我々にとって最も大きな問題であったのは、厚労省並びに薬剤師会内部においてすら、漢方薬業界について何ら事前に調査・諮問することなく、漢方薬全面郵送禁止の省令が決定してしまったことです。
この省令は、漢方薬局・薬店・業界にとっては、死活問題であるばかりでなく、高齢者や持病を持つ方など、社会的弱者といえる漢方薬を服用している患者の方々にとって極めて過酷な規制となったわけです。突然このような事態が起きたことは誠に由々しきことです。本規制は、当初インターネットの医薬品販売規制を目的としており、それについての審議会が数年にわたりもたれていました。しかし、省令公布の数カ月前の段階になって突如、医薬品郵送全面禁止という事態に至ったのです。即ち数か月前の時点では、まったく規制の外に置かれていた薬局・薬店での郵送販売が、基礎調査すらされることなく全面禁止とされたのです。しかも省令公布前にその点に関して漢方薬の立場から政府に対して異を唱えた組織は皆無でした。
こうした事態の可能性に対して、我々はこれまで無関心に過ぎたのではないでしょうか?各業界の権益と、そのサービスを享受する権利をもつ患者の方々の利益を守ることは業界の果たすべき大きな役割といえます。例えば医薬業界においては、医師会を筆頭に多くの団体がそうした活動を行っています。しかし、今回の事態を見ても明らかなように、漢方薬とその患者の方の権利を守るべき団体は、皆無に等しいのではないでしょうか。これまで、私たちの権益を守るべきと考えられていた薬剤師会は、本件では、漢方業界とは全く逆の立場に立ってしまいました。
今こそ、我々自身が立ち上がり、自身の権益のみならず、我々を頼みにして下さっている患者の方々の利益を守るべき組織を作ってゆかねばならないと考えます。今回の事態に憤りを覚えるだけではなく、我々自身が事態解決のために行動して行くことが必要ではないでしょうか。
医薬品郵送販売規制は、我々をはじめ、多くの関係者の努力の結果、平成26年に撤廃されるに至りましたが、今後こうした事態を招くことのないよう、(社)日本漢方連盟は日頃から厚労省や政府サイドと対話・交渉の場を持ち、漢方に関する諸問題について、行政・政府機関より事前に諮問を受けられるような組織となることを目的としています。また、「漢方薬は専門家に相談して体に合ったものを」をモットーに漢方薬を安全で効果的に服用していただくための様々な活動を行っています。
代表理事 | 根本幸夫 | 横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター長(特任教授)。漢方平和堂薬局代表取締役。漢方和漢薬調査研究審議会理事長。総合漢方研究会会長。 |
理事 | 大石雅子 | 横浜薬科大学客員教授。漢方平和堂薬局。漢方和漢薬調査研究審議会理事。 |
澤田博 | 仁成堂漢方薬局代表取締役。漢方和漢薬調査研究審議会評議員。 | |
西島啓晃 | 横浜薬科大学客員教授。慶應義塾大学薬学部非常勤講師。漢方平和堂薬局。漢方和漢薬調査研究審議会理事。 | |
根本ひろみ | 漢方平和堂薬局。 | |
馬場正人 | 株式会社馬場薬局代表取締役社長。漢方和漢薬調査研究審議会理事。 | |
松江一彦 | 松江堂薬局取締役社長。漢方和漢薬調査研究審議会評議員。東京中医薬研究会顧問。江東中医薬学院院長。 | |
監 事 | 山口さゆみ | (株)オペス 代表取締役。行政書士。環境コンサルタント。一般財団法人 地球環境トラスト理事。 |
顧問団 | 東京大学名誉教授伊藤元重先生をはじめ、薬学・医療分野以外にも各分野の先生方に顧問団としてご就任頂いています。 詳しくはこちらをご参照ください。 |