『漢方薬繁用処方実態調査』-漢方薬の運用および販売実態-
1.漢方薬の生産規模と内訳
2.漢方薬の生産額の推移
1.医療現場で用いられる漢方薬
③医師による漢方薬の処方実態のまとめ
- 医師が漢方を処方する場合の診断基準は西洋医学的診断が中心。漢方医学的な診断を優先させる医師は極めて少ない。
- 漢方薬の処方理由は、西洋薬治療の届かない部分に対する効果を挙げる医師が多い。また処方の際は「エビデンスの有無」を基準とする傾向。その一方で「患者からの要望」を挙げる医師が4割以上。
- 漢方薬を処方しない理由は、「漢方薬の使い方が難しい」が最も多い。
- 医師が漢方薬の効果を認めながらも、異なる理論体系になじめず、その運用が漢方医学の理論ではなく、西洋医学で理解しやすいエビデンスや、特定症候に対する運用が中心となっていることを示している。
2. ドラッグストア・一般薬局などで販売される漢方薬の処方別動向
2. ドラッグストア等で販売される漢方薬の処方別動向まとめ
- 上位処方は、テレビCMで大手メーカーが宣伝する商品に用いられている処方がほとんど。
- 防風通聖散と葛根湯で44%、10位までで6割以上を占めており、購入される処方は限定的。
- 販売上位処方は、漢方薬とはいえ「西洋薬のような見え方」で販売されている商品が多く、同一処方でありながら一見まったく異なる商品として販売されるものも多い。
- ドラッグストアなどでの販売が中心となる一般用漢方製剤は、大手メーカーの宣伝力により販売額が顕著に左右されることがうかがえる。
- テレビCMやパッケージ、POPなどの商品訴求イメージにより、消費者も自分に合ているかどうかの相談をせずに購入するケースが多いと考えられる。
3. 漢方薬局で販売される漢方薬の処方別動向
まとめ1 医療現場において
- 現状の漢方薬の運用は、「証」に基づいた体系的な運用とはいえず、特定の症候に対しての特効的な用い方が中心。用いられる処方も限られたものである。
- 防風通聖散と葛根湯で44%、10位までで6割以上を占めており、購入される処方は限定的。
- 販売上位処方は、漢方薬とはいえ「西洋薬のような見え方」で販売されている商品が多く、同一処方でありながら一見まったく異なる商品として販売されるものも多い。
- ドラッグストアなどでの販売が中心となる一般用漢方製剤は、大手メーカーの宣伝力により販売額が顕著に左右されることがうかがえる。
- テレビCMやパッケージ、POPなどの商品訴求イメージにより、消費者も自分に合ているかどうかの相談をせずに購入するケースが多いと考えられる。
まとめ2 ドラッグストアや一般薬局において
- 漢方薬の売れ筋の中心は、大手メーカーのテレビCM品であり、販売量も宣伝量に大きく左右される。購入される処方もかなり限定的。
- 西洋薬でフォローできない消費者ニーズに応えられる漢方薬も多く、運用法がきちんと理解されればOTCとしての需要は更に高まる。
- 漢方処方をベースとしたテレビCM品では、消費者サイドの指名買いが多く、店頭相談はあまりおこなわれていない。また、漢方処方であっても、西洋薬的なパッケージやネーミングが多く、漢方薬との認識がなく購入されるケースも多いと考えられる。
- 漢方薬購入の判断材料は、CMイメージ、パッケージの短い訴求、「風邪には葛根湯」といった定着したイメージであり、漢方に特徴的な「証」の考えに基づいて処方選択するという販売方法は、非常に少ない。
- 今後の課題は、パッケージやネーミングにとらわれず、販売者が商品に対し漢方薬であるという認識を持つ必要。また商品名が異なっていても同一処方のものは、販売サイドで簡単に判別できるような工夫が必要。
- 漢方薬を販売する上で、風邪薬、胃腸薬、抗肥満薬など売れ筋ジャンルごとに「証」の概念に基づく漢方薬の鑑別が行えるようにする工夫が必要。
まとめ3 漢方薬局において
- 専門性の高い漢方薬局においては、おおむね70-80種類以上の漢方処方をベースに運用していると考えられる。
- 個々の漢方薬局間でも用いる漢方薬の傾向はひとくくりにできず、その運用は流派やメーカ傘下のグループ等によって異なった運用がなされ、実体として多様化していることが窺える。
- 逆にそうした背景が、漢方薬局以外の業態での漢方薬の運用を難しくする一因となっている。
- また、漢方専門家が不在の業態では、1処方1疾患という安易な単純化が進んでいる可能性がある。
- 今後の課題として、漢方業界がより発展するために、漢方を扱う薬剤師のすそ野を広げる必要がある。そのためにも、漢方薬運用の面で、漢方薬販売の初心者のために、繁用処方やよくみられる症状に対し、簡便な証の概念に基づく運用法を提示していくことが求められる。